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第225話
――もっと上手くなったら、兄上の像も作ってみたいな。
もっとも、リアルに表現するのは難しいだろうが。何しろ兄はすこぶるつきの美形である。あの美しさを木彫りで表現したいなら、達人レベルに上手くならないと。
でも、いざやってみたら木彫りはなかなか楽しいものだとわかった。時間を忘れて熱中するにはちょうどいい趣味だ。この調子で木彫りを続けて、上手くなったらいつかは……。
――って、また兄上のこと考えてるな、俺……。
何もすることがなくなると、すぐに兄のことを考えてしまう。我に返ったみたいに、急に寂しさがこみ上げてくる。今まで親密にしていた分、その反動も大きかった。生前に兄を亡くした時より虚無感はひどかった。
このまま、兄上に会えなくなったらどうしよう……。
――ああもう、ダメだダメだ!
余計なことを考えちゃいけない。どうせネガティブ思考に嵌っていくだけなのだから。別のことをして気を紛らわせていた方がいい。
アクセルは作っておいたイノシシの肉まんを温め直し、他のおかずも合わせて夕食を作った。ピピにもイノシシの肉まんを食べさせ、ついでに野菜とミルクも与えた。
――明日は死合いがあるんだったか……。
相手は誰だっけ。あまり見かけない名前だった。ランキングも三桁だったと思う。自分より上位ではないので勝ってもポイントはさほど入らないが、仕事みたいなものなのでサボるのは御法度だ。
あまり気は進まないが……。
「……そろそろ休むか、ピピ?」
「ぴ?」
「明日は俺、死合いがあるんだ。その前に山に送っていってあげるから」
「ぴー」
ピピが不満げな鳴き声を上げた。そう言えば以前別れる時もかなり渋られて、髪を引っ張られたり指を噛まれたりしたものだ。
今回もまた拗ねられそうだが、どんなに鳴かれても自宅でピピを飼うことはできない。最終的にカンガルーより大きくなってしまっては、自宅で飼うのは不可能だ。
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