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第229話
次に目覚めた時には、窓から薄く朝陽が差し込んでいた。起きるにはまだ早かったが、目が覚めてしまったのでベッドから出ることにした。
ます顔を洗い、完全に覚醒したところで服を着替える。今日は死合いがあるので、最初から戦闘用の動きやすい服装を着た。
次に簡単に朝食の準備をし、ピピのご飯も用意して、テーブルに並べたところでピピが起きてきた。
「ぴー」
「おはよう、ピピ。ご飯食べたら山に帰ろうな」
「ぴー……」
「……そんな顔しないでくれ。また会いに行くから、な?」
しょぼーんと耳を垂らすピピを、アクセルは優しく撫でた。次に会う時はどれくらい大きくなっているんだろうか……と、少し想像した。いきなりカンガルーサイズになっていたら判別できるかどうか。
――死合いが入っていなければなあ……。
夕方までピピと一緒にいたり、兄の様子をこっそり窺ったり、木彫りに没頭したりできるのに。よりにもよってこんな時に死合いがあるなんてツイてない。
それに、夢の内容も気になる。夢は夢だと割り切って過ごせればいいのだが、如何にも正夢になりそうな予感がして気が気ではなかった。
死合いに出る前に、兄のところに行って「気をつけるように」と注意した方がいいんじゃないか? 怒られるかもしれないし、鼻で笑われるかもしれないが、罠にかかるよりずっといいではないか。
でも自分の姿を見たら兄は逃げて行ってしまうかもしれないし、話を最後まで聞いてくれないかもしれない。たかが夢の内容を真剣に心配するなんて……と聞く耳を持ってくれない可能性もある。
どうしたものか……。
――念のために、手紙でも書いておくか……。
朝食を食べ終わった後、アクセルは紙とペンを出し、兄に向けて手紙を書いた。
ただし、「兄上へ」とは書かなかった。自分が書いたとわかったら、読まずに捨てられてしまうかもと思ったからだ。
長々と綴りたい気持ちをどうにかこらえて二、三行の短い文章にまとめる。そして紙の周りにぐるりとイラストを描き、ハートの形に折った。
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