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第233話(フレイン視点)
「フレイン様、お手紙です」
街をフラフラしていたら、郵便当番が一通の手紙を差し出してきた。何故かハート型に折られていて、表側に「フレイン様へ」と書かれている。これはラブレターだろうか。差出人は書かれていないけど、一体誰からだろう。
当番に礼を言って、フレインは人目のつかないところで手紙を開封した。熱烈な愛の言葉が綴られているのかと思いきや、内容はごくシンプルなものだった。
『俺は何とか元気にやっています。あなたも情報に惑わされず、お健やかに』
パッと見た瞬間、差出人はアクセルだなとわかった。わざと「兄上へ」と書かなかったのだろうが、筆跡でバレバレである。
――自分が書いたとバレたら、読んでくれないかもと思ったのかな……。
ちょっと苦笑してしまった。
我が弟、頭は悪くないのだがどこか抜けているというか、詰めが甘いというか、何かを成す時の徹底さが少し欠けているような気がする。どうせここまでやるのなら、例えば利き手じゃない方の手で書くとか、筆跡でバレないような方法をとるべきだった。
それにしても、いきなり手紙を書いてよこすとは一体どういうことなのか。書いてある文章自体は特に変なところはない。白いペラペラの紙にシンプルな言葉が並んでいるだけだ。
あとは、紙の周りを飾るように、イノシシと棒人間のイラストが描かれているけど……。
――……って、これは……。
あるイラストを起点に時計回りに見ると、ひとつの物語みたいになっている。最初は棒人間がイノシシに追いかけられ、次に棒人間はイノシシの腹の中に移動し、新しく出てきた別の棒人間がイノシシを捌き……うんぬんかんぬん。
――なるほどね……。
伝えたいことはだいたいわかった。あとは相手がどう動くかである。アクセルは確か今日死合いがあったから、事が起きるとしたらその後だろう。
「…………」
フレインは手紙を丁寧に四つ折りにし、懐にしまい込んだ。そして愛用の太刀を腰にぶら下げ、街を出た。
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