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第235話

 ロシェは更に言った。 「僕、いいハチミツの在り処を知ってるんです。それを採って戻ればフレイン様も喜ぶんじゃないですか?」 「……どうかな。今のところ兄上に届ける予定はないが」 「あ、そうですか。でも味は本当にイイんですよ。それは僕が保証します。市場にもなかなか出回らないハチミツなので貴重ですよ」 「そうか……」 「この後の予定がないんなら、せっかくだし一緒に行きません? 死合いの後ですけど、親分のことだからそんなに疲れてないでしょうし。ここからそう遠くない山ですんで」 「う、うん……」  あれこれ理由をつけて誘ってくるロシェ。何が何でもアクセルを山に連れて行きたいみたいだ。ここまで一生懸命だと、ますます怪しく思えてくる。  さて、どうするべきか……。  ――兄上には手紙を渡したが……。  ちゃんと意図を読み取ってくれただろうか。読まずに捨てたりしていないだろうか。あれを読んでくれていれば、罠には引っかからないと思うが、でも自分がイノシシに喰われてしまったらおしまいだし……。  ――でも、あんな巨大なイノシシだったら呼び出しがかかるんじゃ……?  以前ランゴバルトと狩りに行った時も、ランキング上位者が召集させられていた。夢で見たイノシシはそれより一回りは大きかった。そのレベルだったら今回も召集されるのではないか。兄だけでなく、ユーベルやジークも。  だったら、ある程度はどうにかなるかも……と考えかけ、自分の甘さに少し苦笑する。  この期に及んでも兄に甘える気満々だなんて、どうかしているんじゃないか。昨日突き放されたばかりなのに。きっと自分は心のどこかで、弟がピンチになれば兄は必ず助けに来てくれると信じきっているのだ。そんなんだから、兄に愛想を尽かされてしまうのだろう。  ――俺一人でどうにかしなきゃ……。  今回は兄に頼れない。頼ってはならない。アクセルにとって一番嫌なのは、兄が火山に身投げしてしまうことだ。それさえ避けられれば、ロシェが罠を仕掛けようがイノシシが出て来ようがどうにかなる。  さんざん悩んだ挙句、アクセルはロシェにこう答えた。

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