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第236話

「山に行くのはいいが、ハチミツ採集じゃなくて木彫りの木を探しに行きたい。なるべく獣が少ない山の麓で」 「そうですか? 木彫りの木だったら、山奥の方が種類も豊富なんじゃないですかね?」 「……それはわからないけど、あまり山奥に入ると危険だからな。今回は山の麓にしておこう」 「えー……? 親分のランクだったら、奥に入っても大丈夫だと思いますけど」 「いいんだよ。自発的に危険なところに赴く必要はない」  きちんと武器が下がっていることを確認してから、ロシェに背を向ける。 「……行くぞ。早くしないと陽が暮れる」 「あっ、親分! 待ってくださいよ~!」  ロシェが後ろから追いかけてくる。  木彫りの木を探したいというのは嘘ではなかったが、この際口実など何でもよかった。  ロシェに怪しまれることなく適当に話を合わせ、かつ山奥に入らず無事に帰ってくる。それさえできれば、あの夢は回避できるのではないかと思った。自分がイノシシに喰われることが引き金になるのなら、イノシシに遭遇しない場所に行けばいいだけのことだ。  ――それなら、兄上が火山に行くこともない……はず。  アクセルは「大丈夫だ」と自分に言い聞かせ、山の麓に向かった。  麓にはたくさんの木々が生い茂っていた。これだけ木が生えていれば、山奥に行かなくても十分木彫り用の木が探せる。 「親分、木彫り用の木ってどういうのがいいんですか?」  と、ロシェが後ろから話しかけてくる。 「そうだな……。あまり硬すぎると削りづらいから、ある程度加工しやすい木がいいと思う。ヴァルハラで売られてる家具とかは、どういう木が使われてるんだ?」 「やっぱりヒノキとかじゃないですかね? モミとかケヤキもありそうですけど」 「なるほど……。と言っても、実際に使ってみないとどれがいいかわからないんだが」 「じゃあ、この辺の木を適当に切っていけばいいんじゃないですか?」 「そうだな……。そしたら、今日はこの木の枝を切って……」  アクセルが近くの木に手を当てたら、突然ずん……と地響きが襲ってきた。

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