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第240話

「私の子をどこへやった」 「えっ……?」 「私の子を返せ!」  言うやいなや、アクセル目掛けて前脚を振り下ろしてくる。  アクセルは横に避けつつ、オオカミ神の訴えを自分の中で反芻した。  ――『私の子』? 子供を捜してるのか……?  オオカミ神の子だから当然子供もオオカミだろう。頭がふたつあるかは謎だが、そうとわかれば話は変わってくる。  アクセルは一生懸命攻撃をかいくぐり、怒鳴るように言った。 「わかった! きみの子は一緒に捜してやる! だから暴れるのはやめてくれ!」 「黙れ人間! どうせ貴様らが狩ったんだろう! ならば代わりに貴様らを狩ってやるわ!」 「っ……!」  鞭のようにしなる尻尾に殴られ、アクセルは軽々と吹き飛ばされた。空中でどうにか体勢を立て直し、すべりながら地面に着地して、突進してくるオオカミ神を横に避ける。  ――もし既に誰かが子供を狩ってしまっていたら……。  オオカミ神の怒りを鎮める方法はない。退治するか、動けなくなるまで痛めつけることでしか、この獣を止める術はない。  でも……でもそれは、さすがに可哀想なのではないか。このオオカミ神はただ、いなくなった子供を求めているだけだ。意味もなく無差別に暴れているのではない。  だからと言って、このまま放置するわけにもいかない。街に入られたらおしまいだ。何とかここで食い止めないと。 「……!?」  オオカミ神が跳躍した。巨体がズドンと着地し、はずみで地面がぱっくり割れた。直撃は避けたが、割れた足下に一瞬気をとられた。  気付いた時には、オオカミ神の牙が目の前に見えていた。  ――そんな……。  何とか喰われないように頑張ったのに。結局俺はオオカミに喰われてしまうのか。兄上に身投げさせてしまうのか。やはり俺の力では、夢の内容を変えることはできないのか……。 「グオォォォッ!」  オオカミ神の湿った呼気が全身に纏わりついた。小太刀を構える余裕もなく、アクセルは獣の牙に挟まれ、そのまま頭から飲み込まれそうになった。  その時だった。

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