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第243話
なるほど、そう考えればロシェがハチミツ採集に行ったことを知っていたのも納得がいく。常にアクセルの動向を見張っていれば、タイミングを窺ってすぐに現れることも、彼に話していない情報を知ることもできるというわけだ。
――そうか、やっぱりロシェは最初から……。
やや悲しく思い、アクセルはロシェを見た。ロシェは目を伏せており、一切こちらを見てはくれなかった。
確かに途中から怪しいとは思っていた。夢で見た通り、何か企んでいるだろうことは察していた。
そうであっても、残念な気持ちが湧いてくるのを否定できなかった。こうして企みが確定した今でも、できることならただの友人として仲良くしたかった。そんな企みとは関係なく、ただ純粋に自分を慕ってくれていたのだと思いたかった……。
「なら、あのオオカミは……」
「あの子供は、ウルフの自宅の檻で見付けたよ」
と、兄が説明してくれる。
「ウルフはもともと狩人だったせいか、獣を操るのが得意だからね。子供を囮に獲物を誘き出すことも朝飯前なんだってさ。かつてランゴバルトが派手なことやってイノシシ神を誘き出したことあったけど、ウルフはピンポイントで呼び出すことができるそうだよ」
「……そうか……」
「毒物や吹矢を用意するのは主にビラクの役目。彼は毒を使った暗殺術に心得があるらしくて。狩りに必要な毒をいろいろ調合できるみたいだよ」
「…………」
「それで、相手を油断させるのがロシェの役目。彼、あの中で一番優男っぽいでしょ? だからお前を……」
「いや、もういい」
アクセルは片手を上げて兄を制した。それ以上は言われなくてもわかった。というか、聞きたくなかった。聞けば聞くほど胸が痛くなって、悲しみが溢れそうだったのだ。
――何故こんなことに……。
もう一度ロシェを見る。彼は少しだけ顔を上げてこちらを見た。そして再び目を逸らし、言い訳っぽく口を開いた。
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