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第244話

「すいません、あんたのことは嫌いじゃなかったんですよ。正直、実行するかどうか最後まで迷いました。でもフレインのことはやっぱり許せないんで。親しい人を奪われた気持ち、少しでも味わわせてやりたかったんです」 「……そうか……」 「企みは失敗しちゃいましたけど、少しはヒヤヒヤさせられましたかね。あんたが馬鹿正直で助かりましたよ。少しは疑えばいいのに、まんまと罠に引っかかってくれて」 「……いや、多少は疑ってたよ」 「えっ……?」  疑っていたのにロシェについていったのは、「何も起こらないで欲しい」という願いが根底にあったからだ。「罠にかけるために俺を誘ったわけではない」という可能性に賭けたかったからだ。  結果的には残念なことになってしまったけれど、本当は最後までロシェを信じていたかったのだ。 「で、こいつら結局どうすんだ? ヴァルキリーたちに突き出すか?」  ジークが言うので、兄が代わりに答えた。 「いいんじゃない、それで。私たちが手を下すのももったいないし。首を刎ねたところで、ヴァルハラではあまり意味ないからね」 「だな。じゃあちょっと行って来るわ」 「なんだー。久しぶりに首を切れるかと思ったのにー」  ミューが少し唇を尖らせ、首斬り鎌を背負う。  そのまま三人はジークたちに連行されていった。 「許せない……か」  思わずポツリと呟く。  アクセルがヴァルハラにいなかった十一年間に、兄が何をしていたのかはちゃんと聞いていない。相当乱れた生活をしていたのは想像できるけど、あまり積極的に聞きたい内容でもなさそうなので、今まであえて聞かずにいた。  だけど、何も知らないのもよくないのかもしれない。  今回は未遂で終わってしまったけれど、兄が誰かから復讐されるほど恨まれていることは事実なのだ。こうして巻き込まれてしまった以上、アクセルも知らぬ存ぜぬでは通せない。  やはり一度機会を設けて、兄にじっくり昔話を聞かせてもらった方がいいような気がする……。

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