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第245話
「許せないなんて言ってるけど、私からすればただの逆恨みなんだけどな」
兄が心情を察したように顎に手を当てた。
「かつての彼らの親分……誰だっけな、名前は忘れたけど。そいつが変なことしなければ、私だって粛清なんかしなかったのに」
「変なことって……」
「それはアレだよ、大声で言うのも憚られるような乱暴を……」
「……いや、すまない。これは聞かない方がよかった」
大声で言うのも憚られるような乱暴をされたのなら、粛清したくなるのも理解できる。兄の言う事を全面的に信じるなら、逆恨みであることは確かなようだ。
もっとも、逆恨みだろうが何だろうが、恨まれていることは変わりないが……。
「あの、兄上……」
様子を窺うように、アクセルはそっと話しかけた。兄は普段と変わらない様子で、こちらに顔を向けてきた。
「なに?」
「その……いろいろ聞きたいことがあるんだが……」
「いいよ。今なら何でも答えてあげる」
「……そうか」
人気は少ないとはいえ、こんな広場でずっと立ち話をしているわけにはいかない。場所を変えるべく、こう提案した。
「あの、ここじゃ何だからとりあえず家に帰らないか? どっちの家でもいいけど……」
「んー……じゃあ、お前の家に行こうかな。私の家に来ても食べ物がない」
「……また買い出しを忘れたのか」
「そんな状況じゃなかったんだよ」
そう言われ、視線を落として押し黙る。確かに買い出しどころではなかっただろう、いろんな意味で。
「じゃ、行こうか」
くるりと背を向け、住居に戻っていく兄。アクセルも一歩遅れてついていった。家に着くまでは、お互い何も話さなかった。いつもは無言でいても全く気にならないのに、今日ばかりは気まずくてしょうがなかった。
何か話したいと思って何度か口を開きかけたけど、結局何を話していいかわからなくてやめた。聞きたいことは山ほどあるが、それは歩きながらできる話ではない。
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