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第249話

「……これ、俺からの手紙だってわかったのか? 差出人の名前、わざと書かなかったのに」 「そりゃあわかるよ。お前の字を見間違えるはずないもん」 「字で……?」 「うん。お前の字、綺麗でカッチリしてて読みやすいんだよね。いかにも真面目な人が書く字って感じ」 「そうか……」  筆跡でバレてしまっていたのなら、小細工など最初から無意味だったということだ。  小さく息を吐いてハート型に折り直していると、兄が言った。 「というか、堂々と『兄上へ』って書けばよかったのに。受け取り拒否なんかしないよ?」 「これを書いた時はされるかもと思ってたんだ。兄上に突き放されてすぐだったから……」 「あー……そっか。何だかかなり悩ませちゃったみたいだね」 「悩んだよ……。何が悪かったんだろうって……どうしたら仲直りできるのかって……ずっと許してもらえなかったらどうしよう……って……」  声が割れてきて、アクセルは一生懸命涙を引っ込めた。ここで泣いてしまったら、兄の嫌いな「ずるい弟」になってしまうと思ったのだ。 「……例え深い考えがあったのだとしても、もうあんなことはしないで欲しい……。俺、兄上に嫌われたかもと思って、本当に真剣に悩んでたんだ……。ピピが側にいてくれなかったら、俺……多分、一日耐えられなかった……」 「ピピ……って何だっけ?」 「……俺が助けたうさぎだよ。あの木彫りのモデルだ」 「ああ、うさぎか……」 「そうだよ。うさぎの慰めがないと、気が狂いそうだったんだ……。自分でも弱いなと思うけど、こればっかりは本当に……」  手紙を兄に返したところで、またバタリとテーブルに突っ伏す。自分ばかりが本気で悩んでいたのかと思うと、悲しくもあり腹立たしくもあった。  すると兄は小さく苦笑して、こんなことを言い出した。 「お前を傷つけたのは申し訳なかったと思うよ。けど、私だって同じ気持ちだったんだ」 「えっ……?」

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