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第251話

 あの時はたまたまピピがいてくれたが、もしいなかったら自分だってどうしていたかわからない。兄同様、目に付いた戦士を片っ端から誘っていたかもしれない。  そもそも、兄をそこまで追い詰めたのはアクセルなのだ。毒に侵されていたとはいえ、兄を傷つけたのは他でもない自分自身なのだ。一時的に慰めを要求したからと言って、兄を非難することはできない。そんな権利は自分にはない。  ――ああ、もう……。  どうして俺はこうも子供っぽいのだろう。兄の気持ちを考えられずに、自分のことばかり主張して。好きな人を自分で傷つけてどうするのだ。  アクセルはゴンとテーブルに額を打ち付け、土下座するように謝罪した。 「すまない、兄上……。今のは言い過ぎだった。他の男と寝たのは嫌だけど、今回に限っては浮気とは言えない……」 「…………」 「もう嫌だ……俺、兄上を傷つけてばかりで……。仲直りしたかったのに、何で余計なことばかり……」 「……アクセル」  兄の手が頭に乗ってきた。指先でくしゃ、と髪を撫でつつ、苦笑混じりの声を出す。 「もういいよ。いつどこで傷つけて、傷つけられて……なんて、そんな細かいこといちいち覚えてないもの。近しい存在なら、たまにはそういうこともあるはずだよ」 「…………」 「複雑なことは考えずに、悪いと思ったらお互いに謝り合うんでいいんじゃないかな。お前だって、冷静に物事を振り返れるくらいには大人になっただろう?」 「兄上……」  少し顔を上げて、アクセルは兄を見た。兄は慈愛に満ちた微笑みをこちらに向けていた。  ありがたいような申し訳ないような、複雑な気持ちが胸を締めつけ、再びゴンとテーブルに頭をぶつけた。 「兄上は優しすぎる……」 「そうだね、お前には優しいよ。昔からそうでしょ?」 「……ああ、ずっとそうだった。だからつい、どこまでも甘えたくなってしまう」

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