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第252話
「それでいいよ、お前は弟なんだから。あれこれ言ったけど、今更生まれた順番を変えることはできないしね。それに、慰めを要求するくらい傷つけられても、私はお前を嫌いにはなれなかった。弟のことが大好きなのは、未来永劫変わらないんだなって思った。不思議だけど、兄とはそういう生き物みたいだよ」
「兄上ぇぇ……」
とうとう我慢できなくなり、アクセルは兄にしがみついた。兄は当たり前のようにそれを受け入れ、「よしよし」と優しく抱き締め返してくれた。
――ダメだ、俺……。やっぱり兄上なしじゃ生きていけない……。
ほんの一日離れていただけなのに、いい大人がこのザマである。傍から見れば情けない限りだが、兄に依存する体質はこれから先も変わらないし、変えられない。弟とはそういう生き物みたいだ。
アクセルは声を震わせながら、言った。
「俺、兄上が好きだ……。何があっても、兄上が一番だ……」
「うんうん、そうだね。お前の気持ちはちゃんとわかってるよ」
「……『あんたさえいなければ』なんて、思ってないからな」
「うん、そこまでじゃないよね。でも時々は『うぜぇ』って思うこともあるんじゃない?」
「……そんなの滅多にないよ。本当にたまに、ちょっとだけ『困った』って思うくらいで」
そう言ったら、兄は愉快そうに笑った。
「そっか。私は結構、お前に迷惑かけてる自覚あるんだけどな」
「……? 例えば?」
「んー……食材買い忘れて食べるものなくなったり、どうでもいいことでお前を振り回したり、こうやって騙すような真似をしたり」
「それは……」
「結局、お互い様だと思うよ。どんな仲良し兄弟でも、いいところと悪いところがあるんだから。そういう部分を全部ひっくるめて、それでも好きだと思えるなら十分じゃないかな」
「兄上……」
「愛してるよ、可愛いアクセル。これからもずっと一緒にいよう」
「…………」
アクセルは兄の衣装を一度ぎゅっと握り締め、顔を上げた。そして精一杯の想いを込めて唇にキスをした。
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