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第254話*
――兄上が尻フェチなら、俺は何フェチだろう……。
改めて何かと言われると、ちょっと考えてしまう。顔も好きだし手も好きだし、背中から腰に続くなだらかなラインも好きだ。髪も肌も声も、全てが好ましい。
よくわからないな……と思いつつ、おとなしく兄に身を委ねる。かなりのお気に入りなのか、兄は弟の尻から太ももを手のひらで擦 ったり、形を確かめるように柔く揉み解していた。
「あの、兄上……」
いつまで触っているんだ、と言外に窺ったら、兄はにこりと笑って下着に手をかけてきた。そしてずるりと下着を脚から引き抜かれ、いよいよ全裸にされてしまう。
「っ……」
デリケートな部分もまじまじ見られて、アクセルはふいと顔を背けた。兄弟だし、お互いの裸は見慣れているはずなのに、こういうシチュエーションだと何故か途端に恥ずかしくなる。
「ねえ、お前木彫り始めたんだっけ?」
「え? ああ……あれは本当に手持ち無沙汰になったからちょっとやってみただけで」
「ふーん? でもなかなか上手だったよ。もっと腕が上がったら、お前の木彫り作って私にプレゼントして欲しいな」
「あ、ああ……別にかまわないが……」
自分の木像を作るなんてちょっと照れくさいけど……と思っていると、兄は嬉しそうに笑ってこう言った。
「わあ、ありがとう。ちゃんと局部まで再現してね」
「……は?」
「お前の綺麗な身体を木像で毎日拝めるなんて、お兄ちゃん幸せだな。想像しただけでわくわくしちゃう」
「えっ!? そっち!?」
兄が求めていたのは、一般的なフィギュアではなく裸の木像だったらしい。
衝撃のあまり、アクセルは半身を起こして抗議した。
「兄上、すまない……さすがにそういうのは作れない……」
「えー、そう? お前なら練習すれば何でも作れるようになりそうだけど」
「技術的な問題じゃなくて気持ちの問題だ。自分の裸なんて恥ずかしくて彫れないよ……」
「ふーん? お前はシャイだね。古の芸術家は、平気で裸の石像とか作ってたのに」
……そんな昔の芸術家と一緒にしないで欲しい。
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