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第268話

「はぁ……はぁ……あ……」 「ふふ……可愛い、アクセル」  そう言って軽く唇にキスを落とし、兄はずるりと腰を引き抜いた。さすがに今度は差しっぱなしにすることはなかったので、少しホッとした。やりたい放題にやっているが、肝心なところはちゃんと気を遣ってくれて嬉しい。 「やっぱり、お前と交わっている時が一番いいね」  と、兄がごろりと隣に寝転がってくる。そして心なし膨らんだアクセルの下腹部をさすり、幸せそうに微笑んだ。 「子供が欲しいと思ったことはないけど、お前が生んでくれるならいいかもなぁ。お兄ちゃんの子、生んでみる気はない?」 「……。俺は男だぞ」 「知ってるけど、ここはヴァルハラだし。もしかしたら、男同士でも子供ができるかも」 「……。まあ、できたらいいよな」  叶わない夢なのはわかっているが、ヴァルハラは摩訶不思議な世界だし、ひょっとしたら……と思わんでもない。 「それより兄上……一度湯浴みしていいだろうか。色気がなくて申し訳ないんだが、さすがに腹が減ってきた……」 「ああ、そうだね。じゃあ身体綺麗にしてから食事にしようか」  頷いて起き上がろうとしたのだが、意外と身体がだるくなっていて少し驚いた。気だるい身体に鞭打って起き上がったら、兄が親切にも手を貸してくれた。 「一緒にお風呂入ろう? 身体洗ってあげるよ」 「……え。いや、それは……兄上と入ると、またそこでワンラウンドありそうなんだが」 「あれ、お風呂で抱かれるの嫌だった?」 「そういうわけじゃないが……湯浴みにならないというか……」 「ごめんね。お前といると嬉しくてついいろいろやりたくなっちゃって」  ……そんな風に言われると、つい絆されそうになる。  兄は後ろからこちらを抱き締めてきて、耳元で囁いてきた。 「でも、お前が困るって言うなら今日はやらないよ。お風呂の方が都合がいいけど、お前に嫌われることはしたくないからね」 「あ……ああ、そうか……」 「さ、お風呂行こう? 中も綺麗に洗わないとお腹壊しちゃう」 「っ……兄上……!」  恥ずかしくなって、アクセルは兄の腕から逃げ出し、全裸のまま風呂場に足を踏み入れた。

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