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第270話(リバ注意)
自分には兄がいないとだめだし、兄にも自分がいないとだめだ。どちらが欠けても生きていけないし、お互いが存在してこそ自分たちは本来の力を発揮できる。
「ところで兄上……距離を取っていた時、ジーク様に慰められたって言ってたよな?」
少々引っ掛かっていることを口にしたら、兄は首をかしげた。
「そうだけど……何? また『浮気だ』って言うの?」
「いや、もうそんなこと言わないが……でも、その……」
焼き上がったイノシシ肉を皿に移しながら答える。
今更蒸し返して気にするのも女々しい。が、これはあくまで気持ちの問題だ。上手く言えないけど、このことがいつまでも頭に引っかかったまま生活し続けるくらいなら、二人きりの時にきっぱりケジメをつけてしまいたい。
アクセルは空っぽになったフライパンを流しに置き、団子を茹でていた兄の肩に手をかけた。そしてこちらを振り向かせると、そっと唇に自分のものを押し当てた。触れるだけの軽いものだが、気持ちは十分こめたつもりだ。
「ありゃ……」
兄は少し目を丸くしてこちらを見つめると、やがて口角を上げてニィッと笑った。
「何? お前もやりたくなっちゃった?」
「まあ、その……なんだ……兄上が最後に味わったのがジーク様っていうのは、やっぱりちょっと複雑だから……」
「はは、妬いてるの? 大丈夫だよ、私の心はジークにはない」
「そういう問題じゃないんだ……。兄上が俺を愛してくれているのはわかってるけど、でも……」
何と言えばいいかわからなくて目を泳がせていると、兄はまた軽やかに笑った。きちんと鍋の火を消し、首筋に腕を回したかと思うと、顔を引き寄せられて唇を吸われる。
「いいよ……じゃあいっぱい慰めて。ジークの痕跡もなくなるくらい、気持ちよくして」
「ああ、わかった……」
アクセルは兄の腰に手を回し、もう片方の手を頭に添えて濃厚なキスを見舞った。兄も積極的に応えてくれた。舌を絡め合い、甘い唾液を吸い合って、お互いの粘膜をたっぷり味わう。
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