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第286話

「……ん? ということは何か? 俺はしばらく兄上とは戦えないってことか?」 「そういうことになるねぇ。お前と初めて死合いをしたのは、ええと……三ヶ月前くらい?」  ……これまたざっくりした記憶だが、おそらくそのくらいだと思われる。 「その時のお前はまだ100位代だったでしょ? それが三位の私と死合ったから、しばらく一桁代の戦士とは当たらなくなるよね」 「ええー……? でも今の俺は三十五位だぞ? 昔と状況が違う」 「その辺はどう判断してるのか、ヴァルキリーに聞いてみないとわからないけど。でも基本的には、自分と近いランクの戦士と死合う確率が高いみたい。以前私がランゴバルトと死合ったように、お前が上位十位以内に食い込んで来たら、自ずとそのチャンスも増えてくると思うんだよね」 「そうか……」 「だからランダムの可能性を待つより、お前がランクを上げた方が早いよ、きっと。頑張ってね、アクセル」 「……簡単に言ってくれるよな、兄上は」 「私の弟はデキる子だからね。お兄ちゃんの願いは必ず叶えてくれるもん」  そう決めつけられてしまっては、「できない」とは言えない。  ――まったく、兄上は俺を焚きつけるのが上手い……。  敬愛する兄が期待してくれているのだ。それならもっと鍛錬に励まなければ。兄に追いつくくらい……いや、追い抜くくらい、明日からまたランク上げに邁進していこう。  アクセルは布団を被り、目を閉じて言った。 「おやすみ、兄上……また明日」 「うん……おやすみ。いい夢見ようね」  それっきり、兄も何も言わなかった。そうして無言でいたら、いつの間にか眠っていた。 ***  翌朝。アクセルは兄が起きる前に外に出て、家から鍛錬場までランニングして帰ってきた。  体力に不安があるわけではないが、今より更に上のランクを目指すなら、体力強化は欠かせない。メンタルの安定にも繋がるし、アクセルにとっては欠かすことのできないトレーニングだ。

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