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第289話
「……さすがだな。兄上なら、洞窟に入っても発狂することはなさそうだ」
「んー……発狂はなかったけど、恐怖は感じたよ。視覚と聴覚を奪われれば、どんな人でも多少は怖くなる。ミューみたいな変人じゃない限りはね」
「ミューは……あまり怖がらなさそうだな」
「いや、それどころかかなり楽しんでたよ。『真っ暗楽しー! もう一回やってくる!』って走って往復してたし」
「そ、そうか……」
ミューのメンタルは一体どうなってるのかと、時々不思議に思う。その強さを半分でも分けて欲しいものだ。
兄がポンと肩を叩いてくる。
「そういうわけだから、お前も頑張って。もし洞窟に入ることになったら教えてね」
「ああ、わかった……」
洞窟に入るのは、ケイジに他の修行方法を聞いてから判断しよう。
――ランクを一桁まで上げるには、やはりそう簡単ではなさそうだ……。
内心で長い息を吐き、アクセルは兄と一緒に朝食の準備をした。
***
食事した後、アクセルは戸締まりをして世界樹 まで掲示板を見に行った。兄は自分のランクにはあまり興味なさそうだったが、「死合いのスケジュール確認も必要だから」と無理矢理世界樹の前まで引っ張っていった。
「おっ。フレインに弟くん、今日は元気そうだな」
掲示板の前には多くの戦士が集まっていたが、その中にジークの姿もあった。
一瞬、複雑な思いが芽生えかけたが、自分ばかり気にしているのも大人気ない気がして、なるべく考えないようにした。ジークの痕跡は全部消したし、兄もこれ以上浮気はしないはずだ。そう信じている。
「やあジーク。きみもランク確認に来たのかい?」
兄が普段と変わらない口調で話し始めたので、アクセルは黙って聞き耳を立てた。
ジークが腰に手を当てた。
「いや、どちらかというとスケジュール確認だな。ランクはほとんど変わってなかったからさ。ちなみにお前さんは、七位から四位に浮上してたぞ」
「あ、そうなんだ? じゃあユーベルを倒したら元に戻るね」
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