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第290話

「ユーベルは喜んで席を譲るんじゃないか? ランゴバルトのためにいちいちポイント操作するのめんどいって言ってたしな」 「あー……確かにそれはめんどくさいね。やっぱり四位のままでいいかも」 「はいはい。……あ、そう言えばそろそろオーディン様の審判が下されるんじゃねぇかな。気になるやつがいるなら、注意しといた方がいいぞ」 「んー……特にいないかな。私はアクセルが無事なら何でもいいんだ」  そんなことをさらりと言われ、思わずキュンとなってしまった。  ――しかし、「オーディン様の審判」って何のことだろう……?  きちんと尋ねてみたかったが、兄が掲示板を見て声を上げたので、そのチャンスを失ってしまった。 「わあ……アクセル、見て見て! お前、二〇番代に上がってるよ」 「えっ……?」  ランキング表を確認したら、本当に二〇番代に上がっていた。末席の「二十九位」なのでいつ転落してもおかしくないが、それでも三〇番代から二〇番代に上がれたことは大きい。  兄が嬉しそうに笑ってくれた。 「すごいなー。もうちょっとで私に追いつくよ。本当に頑張ったねぇ」 「いや……兄上がいなかったら、ここまで頑張っていなかったよ。あなたが上で待っててくれるから、俺は努力し続けられるんだ」 「そっか。でも、努力し続けられるのも才能のうちだよ。後でご褒美のチューしてあげるね」 「……兄上、そういうことを公共の場で言わないでくれ」  ご褒美をくれるのは嬉しいが、人の目があるところでイチャつくのは恥ずかしいのでやめて欲しい。  少し困惑していると、ジークがちょっと噴き出した。 「仲直りできたようで何よりだ。じゃあ弟くん、ランク上げ頑張れよ」  軽く手を振りながら、あっさりと立ち去っていくジーク。  アクセルはちょっと目を丸くした。もっと何か言われるかと思っていたので、余計に拍子抜けだった。  ――あの人も、あっさりしたものだな……。  もっとも、それくらいの人でなければ兄の友人は務まらないのかもしれないが。

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