291 / 2014

第291話

「それで、お前今日はどうするの? 仕事も死合いも入ってないみたいだけど」 「ケイジ様に会いに行ってくる。どんな修行が向いているか聞いてみるよ。そこから死合いまで武者修行だ」  死合いが入っているのは三日後である。それまでに「狂戦士モード」をコントロールするのが今の目標だ。  すると兄がほんの少し唇を尖らせた。 「そうかー……私はどうしようかな。今週、かなり暇なんだよね」 「そんなこと言われても。狩りをするなり書を読み漁るなり、それなりにやることはあると思うが」 「まあね。でも一人じゃつまんないな。私も一緒に武者修行しようかな」 「兄上が修行したら、もっと強くなってしまうじゃないか」  言外に追いつけなくなると困る……と言ったら、兄は更に唇を尖らせた。一緒にいられないのが不満のようだった。  ――なんか兄上、以前よりかなり距離が近くなったような……?  何となくだが「一緒にいたがっているような言動」が増えた気がする。以前の兄なら弟が三日間武者修行すると言ったら、 「あ、そうなんだ。じゃあ頑張ってね」  と、あっさり背を向けただろうに、今は「一緒に修行したい」と言ってくるのだ。喧嘩して距離をとった反動なのかもしれないが、四六時中べったりされるといささか驚いてしまう。  もちろん、鬱陶しいとは微塵も思わないし、むしろ嬉しいくらいなのだが……。 「とにかく兄上、俺は死合いまで修行するからな。そのつもりでよろしく」 「はいはい、わかったよ。お兄ちゃんはその間、どこかでおとなしく時間を潰してます。……でも、ご飯は一緒に食べようね」 「ああ、もちろん」  昼は修行、夜は兄とご飯。充実した日々が送れそうだ。  アクセルは一度兄と別れ、早速ケイジを捜しに町に出た。朝市が閉まる時間帯だったが、果たして彼はいるのかどうか。  以前、まんじゅうを売っていたテントの近くまで行ってみたら、彼はちょうど店仕舞いをしているところだった。すぐに見つかってよかった。

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