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第292話
「あの、すみません」
「……む? おお、そなたはフレインの弟君だったな。すまぬが、まんじゅうはもう売り切れてしまって……」
「いえ、まんじゅうではなく。ケイジ様に少しお話を窺いたくて」
「なるほど。……して、何の用だ?」
前置きするのは苦手なので、単刀直入に話を切り出した。
「『狂戦士モード』をコントロールするのに、いい修行方法を教えていただけませんか?」
「ほう……狂戦士か。修行法は様々だが、具体的にどんな修行が望みなのだ?」
「兄からは『洞窟を踏破するのが一番手っ取り早い』と聞いたのですが、それ以外に何かあれば……」
「ふむ……」
と、ケイジが顎に手を当てる。
「初めて修行するのなら洞窟踏破が最も安全で初心者向きなのだが、それ以外でとなると、やや荒っぽい修行になるぞ」
「……と、申しますと?」
「第一に、『細い丸太橋の上で一対一の戦闘訓練を行う』というものがある。丸太橋の下には飢えたオオカミがいるから、落ちたら一環の終わりだな。対戦相手を用意する必要もあるゆえ、これは少々リスクが大きい」
「そ、そうですね……」
「第二に、『真っ赤に熱せられた鉄棒の上を素足で通り抜ける』というのもあるな。これは丸太橋の代わりなので、下にはもちろん飢えたオオカミがいる。対戦相手を見つける必要はないが、落ちたら蘇生不可能だ」
「……それは修行というより拷問に近いような……」
「第三に、『確率ギロチン』というのもあるぞ。ギロチンの刃の下に仰向けで固定された状態で、ギロチンの刃に繋がる紐を一本一本切っていくものだ。紐は全部で三十本あるが、どれがギロチンに繋がっているかはわからない。落ちるか落ちないかの恐怖を、ギロチンの刃を見ながら身動きとれずに味わっていなければいけないわけだ。今のところ、この恐怖に耐えられたのは五本の指で数えられるほどしかいないな」
「は、はあ……そうですか……」
……聞いている限り、どれもこれもほとんど拷問である。
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