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第293話

 ――何だかんだで、洞窟踏破が一番シンプルで簡単そうだ……。  アクセルは内心でこっそり溜息をついた。無音の暗闇程度に怖気づくレベルなら、最初から狂戦士モードなど身に付かないということか。今以上にランクを上げたいのなら、それくらい簡単にこなせないとだめだということか。 「よくわかりました。お時間をとらせてしまい、申し訳ありません」 「む、そうか。役に立てたのなら幸いだ。修行、励めよ」 「はい、ありがとうございます。それでは」  深々と頭を下げ、アクセルはその場を立ち去った。  結局洞窟を踏破することになりそうだ……と、兄に報告しに行こうと思ったのだ。  ――というかケイジ様、本当にあんな修行してるのか……?  細い丸太の上での対戦はともかく、真っ赤に熱せられた鉄棒の上を素足で歩くなど、正気の沙汰とは思えない。ランクが上の戦士でも普通に焼け死にそうだ。それを「修行」と称して当たり前のようにやってしまえるのだとしたら、ケイジはかなりのマゾヒスト……いや、もっと言えば変態かもしれない。  やっぱり上位ランカーはいろんな意味で変わってる人が多い……と、アクセルは内心で呟いた。  兄を捜したところ、彼は図書館前のテーブル付きベンチで退屈そうに書物を眺めていた。内容があまり面白くないのか、頬杖をついたまま無造作にページをめくっている。 「兄上、何を読んでいるんだ?」  声をかけたら、兄はパッと顔を上げてこちらを見た。眺めていた本をパタンと閉じ、にこりと微笑みかけてくる。 「おかえり、アクセル。ケイジから話は聞けたかい?」 「ああ。何だかんだで、洞窟踏破するのが一番向いていそうだ……」 「はは、やっぱりね。あんな拷問めいた修行ができるのはケイジくらいなものだよ」 「……だろうな。ところで、その洞窟の場所なんだが」 「いいよ、案内してあげる。入口まで一緒に行こうか」  持っていた本を放り出し、ベンチから立ち上がる兄。  図書館に戻しに行く気配もなかったので、アクセルは本を拾い上げて聞いた。

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