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第296話(フレイン視点)

 弟が洞窟に入っていったのを見届けてから、フレインは入口を離れた。  ――さてさて……あの子はどんな経験をするだろうね。  光も音も届かない暗闇では、人の本性が剥き出しになる。自分の本心と向き合い、自分自身と戦うことになる。そうやって自分を乗り越えてこそ、また一段と強くなれるのだ。  メンタル強化を望んでいた弟には、最適な修行だろう。 「おや、フレインではありませんか。相変わらず暇そうにしていますね」  ユーベルの屋敷の前を通りかかったら、その主に声をかけられた。 「今、ちょうどジークやミューと共にお茶をしていたところなんです。あなたも一緒にどうですか?」 「おや、本当? じゃあお邪魔させてもらおうかな」  ユーベルはトップセブンの戦士の中で、最も華やかな生活をしている。屋敷もほとんど城のような建物だし、時間がある時はこうして自前のお茶やお菓子を振る舞ってくれるのだ。さすがは貴族出身というか、時間の潰し方も優雅である。  まあ、やることもなくて暇だったからちょうどよかった。フレインは早速ユーベルの案内で屋敷の庭に赴いた。 「わー、フレインだ。いらっしゃーい!」 「な、言ったろ? 今ヒマしてるはずだから絶対来るってよ」 「ええ、フレインは無趣味ですからねぇ。弟くんがいないと手持ち無沙汰になって仕方ないんでしょう」 「きみたち、何かいろいろ失礼なこと言ってない? まあいいけど」  フレインは苦笑しながら席に着いた。  テーブルにはユーベルが厳選した紅茶とおしゃれな焼き菓子、サンドイッチ等が置いてあった。砂糖代わりのハチミツも用意されていた。山に直接採りに行ったのだろうか。機会があれば、ハチミツ採集に再チャレンジしたいところだ。 「ねえねえ聞いたよ。今アクセル、洞窟で修行中なんだって?」  ミューがクッキーを頬張りながら話しかけてくる。フレインは微笑みながら答えた。 「そうだよ。終わった頃に迎えに行くつもりさ」

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