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第299話(フレイン視点)

「二十九位だよ。多分、洞窟踏破して狂戦士モードをコントロールできるようになったら更に上がるだろうな。俺たちの誰かが弟くんと戦う日も近いかもしれないぞ」 「えー、ホントに? だったら僕、アクセルと死合いたいな~。ああいう人って、斬ったらいい顔してくれると思うんだ」 「ミューは見かけによらず斬りたがりですねぇ……。時折、あなたが死神のように見えてきますよ」 「んー、そっかなー。でも、僕みたいなやつが死神だったら、みんな油断して首斬らせてくれそう」 「首斬るで思い出したけど、そろそろオーディン様の審判が近いぞ」  と、ジークがティーカップを置く。 「破魂に引っ掛かるヤツは下位ランカーだろうが、人質交換に関しては……弟くん、ヤバいんじゃないか?」 「あー……うん、まあ……可能性はあるよね。ロキ様も目立っている人を選ぶことが多いし……」  ヴァルハラには一年に一度「人質を交換する」というシステムがある。  そもそも、ヴァルハラというのは「アース神の世界(アースガルズ)」のほんの一部で、天上には他に「ヴァン神族の世界(ヴァナヘイム)」、「光の精の世界(アールヴヘイム)」という二つの世界があるのだ。  特にヴァン神族とは、年に一度人質を交換し合って和議を結んでいるのだが、その人質として選ばれるにはいくつか条件がある。オーディンの眷属(エインヘリヤル)から選ばれることは少ないものの(通常はアース神の中から誰かが選ばれることが多い)、エインヘリヤルが指名される場合は、「ランクが高いこと」、「見目がいいこと」、「単純なロキの好み」という暗黙の条件があったりする。  それに照らし合わせると、アクセルは人質として選ばれる可能性が極めて高かった。  人質に選ばれた者は一年間ロキの元で暮らさなければならず、今までのような自由は制限されてしまう。当然のことながら里帰りも許されず、できることと言えばせいぜい手紙のやり取りくらいで、見知らぬ館でたった一人、ヴァルハラを懐かしみながら一年間耐えるしかないのだ。

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