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第313話(フレイン視点)
フレインは食糧棚を覗き、中に何が残っているか調べた。イノシシの干し肉やジャガイモはあったが、他の食材はなかった。この間買い足ししたはずなのに、おかしいな。
起き抜けの弟に硬い干し肉や干からびたジャガイモを与えるわけにはいかなかったので、市場に行って食材をできる限り買い込んだ。ミルクや米、小麦粉、チーズ等も買ってみた。これでミルク粥でも作ってあげよう。
家に戻り、食糧棚に食材を詰め込む。
次に、洗い場に行って脱衣籠を確認した。アクセルの戦闘服が、薄汚れたまま放置されていた。起きたら洗おうと思っていたのか、本当に脱ぎっぱなしの状態になっている。真面目な弟にしては珍しい。
よっぽど疲れたんだな……と密かに苦笑しつつ、フレインは弟の服を洗濯に出しに行った。
棺が並んでいるオーディンの館から歩いて一分のところに、やや小さめの建物がある。そこに「魔法の洗濯ドラム」が置いてあった。汚れた衣装を放り込んでスイッチを入れれば、勝手に綺麗にしてくれるという優れものだ。家で洗いきれない頑固な汚れ等は、この洗濯ドラムで洗うと決まっている。
フレインは早速、空いているドラムに汚れた衣装を入れた。手袋や下着、靴下も全てドラムに詰め込んでやった。そして蓋を閉め、ポチッとスイッチを押す。ドラムはゴゥン……ゴゥン……という音を立てて稼動し始めた。
魔法のドラムだから、すぐに綺麗になるよね……と近くの椅子に腰かけて待っていると、不意に横から声をかけられた。
「おや、フレイン様じゃないですか。こんなところで珍しいですね」
誰かと思ったら赤毛の少年だった。アクセルの同期だった子だ。最近はあまりつるんでいるところを見かけないけど、名前は確か……。
「……チェイニーです。まあ、覚えていなくても結構ですよ」
と、苦笑いをするチェイニー。彼は胸ポケットから一通の封筒を取り出し、それをこちらに差し出してきた。
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