317 / 2200

第317話(フレイン視点)

 戦闘服はともかく、私服はペアルックにしてみようか。今度一緒に洋服買いに行くのもいいかもしれない。一年間人質として離れ離れになってしまうから、買い物行くならその前に済ませないと……。  そんなことを考えながら、フレインは自宅に戻った。  アクセルは未だに目覚めていなくて、ベッドの中で爆睡中だった。かれこれ六時間近く寝ているのだけど、そろそろ起きないものだろうか。 「アクセル~……まだ寝足りないのかい? お兄ちゃん、お前に話したいことがあるんだけどなぁ……」  と、つんつん頬をつついてみたが、全く起きる気配はなし。寝返りすら打たず、静かに寝息を立てている。  しょうがないなぁ……と苦笑しつつ、フレインは台所に入って食事の準備をした。  先程買ってきた米やミルクを食糧棚から出し、水で軽く米を洗う。それをやや大きめの土鍋に入れ、火にかけてそのまま炊くことにした。本当は水を多めに入れて直接お粥状態にしてもよかったのだが、それだと失敗する未来しか見えなかったので、火加減に注意しつつ土鍋を見守った。  ――この土鍋、いつかアクセルと鍋をつつくために買ったんだっけ……。  アクセルがまだヴァルハラに来る前のことだ。あの時は弟が本当に来てくれるかわからなかったので、願掛けの意味も込めてわざと大きめの土鍋を買ったのだ。一人で使うには大きすぎたから、今まで使う機会はほとんどなかったけれど。  噴きこぼれに気を付けながら、土鍋の近くで玉葱をみじん切りした。後でミルク粥を作る時にご飯と一緒に入れるのだ。ついでにチーズもなるべく細かく切り刻み、熱で溶けやすいように下準備しておいた。  ――さて……そろそろかな?  土鍋の火を強火から弱火にし、焦げができないようじっくり炊き上げる。完全に水分が飛んだところで、フレインはミトンをして土鍋の蓋を開けた。  白い湯気と共に、つやつやした米が炊き上がっていた。我ながら、なかなか上手に炊けたと思う。これは絶対美味しいはずだ。

ともだちにシェアしよう!