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第326話*
不安は……ある。というか、不安しかない。ヴァルハラを離れ、知らない場所で知らない神々に囲まれ、それで一年間も過ごすなんて全く想像できない。何かトラブルがあっても兄に頼るわけにはいかず、自力でどうにかするしかない。そこもまた不安だった。
でも……。
「大丈夫だよ、兄上」
アクセルは兄をぎゅっと抱き締め返した。本当は大丈夫じゃないけど、あえて大丈夫だと言ってみせた。
そうでないと、兄は余計に心配してしまう。
「一年くらいなら何とかなるさ。生前だって、兄上がいない環境で十一年間なんとかやって来られたんだから……。用心していれば、きっと大丈夫さ」
「うん……私も何も起きないことを願ってる。もしお前に何かあったら、バルドル様のところに乗り込んじゃうかも」
「……それはさすがに遠慮してくれ。戦士 ならともかく、相手は神だ。何も起きないように頑張るから、兄上はヴァルハラで待っていてくれ」
「うん、指折り待ってるよ。お兄ちゃんが寂しくならないように、手紙は書いてね」
「ああ、もちろん」
じっと見つめ合い、当たり前のように口付けを交わした。角度を変えて何度も唇を啄まれ、嬉しさと切なさがこみ上げてくる。
永遠の別れではない。たった一年離れるだけだ。もちろん不安はあるけれど、手紙をやり取りできるなら、多少の寂しさも埋められる。
だからきっと……大丈夫だ。
「じゃあ、早速続きをやろうか」
兄がバサッと上着を脱ぎ、トップス一枚になった。そしてくるりと身体をうつ伏せにされ、腰だけ高く抱え上げられる。
「あ、ちょっ……!」
後ろから覆い被さって来られて、アクセルは全身を震わせた。尻に硬い欲望が当たり、ぞくぞくして肩越しに兄を見やった。
「兄上……」
「ああ……お前、本当にいい顔してる。もっといじめて乱れさせたくなっちゃう」
「っ……」
「じゃあ、挿っちゃうね」
「あっ、あっ……、あう……ふッ!」
一気に楔を打ち込まれ、びくんと腰が大きく跳ねる。視界が白く灼け、夥しい量の白濁がシーツに散った。大波に攫われたみたいに意識が遠ざかり、爪先まで甘く痺れて動けなくなる。
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