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第329話*
「あれ、あのことまだ根に持ってる? 大丈夫だって、今度はそんなこと言わないから」
「ほ、んとか……?」
「もちろんだよ。一目散に駆け寄って、ハグしてチューしてあげるね」
「そ、そうか……うっ」
奥の方をグリッと掻き回され、アクセルは息を詰まらせた。中を刺激される度に出された白濁がとろりと溢れてきて、自然と背筋が震える。
「ちょっと、もう兄上……」
兄の手をペシンと叩き、アクセルはむくりと身体を起こした。このままエンドレスに抱かれ続けるのはさすがにマズいと思ったのだ。
「俺、湯浴みしてくる……。兄上は食事の準備でもしていてくれ」
「ありゃ、もう終わっちゃっていいの?」
「明日は死合いがあるし、その他にもたくさんやるべきことがあるからな。人質に行かなきゃいけないなら、その前に家の片付けもしておきたいんだ」
「……お前は本当に真面目だね。私のいい加減さを少し分けてあげたいよ」
「多分、二人でバランスをとっているんだ。だから相性がいいんだろう」
そう言って、ベッドから降りる。浴室に行く直前、あることを思い出し兄に釘を刺した。
「くれぐれも、浴室には入って来ないようにな!」
「はいはい、わかったよ。私はご飯の支度をしています」
と、キッチンに入っていく兄。
それを確認してから、アクセルは湯浴みをしに行った。温かい湯を全身に浴び、中に出されたものを全部掻き出し、丹念に全身を洗ってから、再びザバーッと湯を浴びる。
それでもまだ兄の温もりが残っている気がして、無意識に身体が疼いた。
――一年、か……。
当たり前に過ごしていればたいした時間ではない。兄と死に別れた十一年間と比べれば、あっという間だとも思える。
それでも、自力で会いに行けないというのは辛いものがあった。せっかくヴァルハラで再開できたのに、また離れ離れになるのは寂しくてたまらなかった。
本当は人質になんか行きたくない。ずっと兄と一緒にいたい。でも自分が嫌だと言ったところで決定は覆らない。
ならばせめて、送り出されるまでの数日間は、なるべくたくさんの時間を共有しなくては……。
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