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第336話
「兄上……」
「うん、何?」
「俺がいなくなっても、ジーク様と浮気なんかしないでくれよな……」
「えっ……?」
「あ……もちろんジーク様だけじゃなくて、他の誰とも……。兄上はとても綺麗で魅力的だから、誘われることもあるかもしれないが……でも、俺はやっぱり、その……」
そう言いかけたら、兄にギュッと抱き締められた。ジークが近くにいるのに、兄は全くお構いなしだった。逆にアクセルの方が戸惑ってしまった。
「まったくお前は、何の心配してるんだい? 私の心はお前にしかないのに」
「あ、ああ……それは俺もそうなんだが」
「だったら何も心配いらないよ。どんなに離れていても、私たちは相思相愛だ。浮気なんてしようがない」
「兄上……」
「でも、どうしても不安ならちょっとだけ見せつけてあげようか」
「えっ? ……っ」
両手で顔を掴まれた刹那、兄の美顔が至近距離に見えた。
一瞬、何をされているのかわからなかったが、重なった唇をぺろりと舐められ、アクセルはぴくりと肩を震わせた。
――ちょっ……ジーク様が見てるって!
兄の背後に他人の気配を感じる。誰かに見られている状態でキスをするのはものすごい抵抗があり、アクセルは焦って兄の肩を押した。
「んんっ……! ん、あ……あにう……んっ」
けれど兄はがっちり頭を掴んで離してくれず、本当に遠慮なく舌を入れてくる。最初からジークに見せつける気満々なのか、わざと音を立てて濃厚なキスを見舞ってきた。
逃げ回る舌を引きずり出され、甘い唾液を注ぎ込まれ、唇を軽く食まれて、だんだん息が苦しくなってくる。
――もう、これ以上は本当にヤバい……!
訓練前なのに息切れしてしまう。それどころか、官能に火がついて止められなくなってしまう。
兄上、頼むから離してくれ……と強く肩を叩いたら、ようやく兄の唇が離れた。
アクセルは肩で荒っぽい息を吐き、よろよろと兄にもたれかかった。
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