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第338話
「私も本気でいくから、お前も本気出していいからね? お兄ちゃんだからって遠慮しないで」
「ああ、もちろんだ」
力強く頷いたら、兄は嬉しそうに笑ってくれた。
ジークが一度大きく手を叩いた。
「じゃ、一応ルールな。基本的には、公式の死合いと同じだ。どちらかが戦闘不能になったらそこで終了。狂戦士モードは自由に使ってよし。……まあ、そのための訓練だから狂戦士にならないと意味ないけどな」
それはそうだ。狂戦士モードをコントロールするためにやっているのだから、出し惜しみしてはいけない。本気でやらなければあっという間に首を刎ねられてしまう。
「あと、これはなるべく心がけといた方がいいと思うんだが」
と、ジークが付け加える。
「弟くん、明日は朝から死合いがあるよな? もしここで訓練して、棺に入るようなことがあったら翌朝に間に合わないかもしれない。だからお互い、なるべく肉体的損傷は少ない方がいいと思うぞ。……まあ、不戦敗でもよければ話は別だがな」
そうか。棺に入るのはいいが、あまりめった斬りされると回復が遅くなってしまうのか。目覚めた時には死合いが終わっている可能性があるのか。それはちょっと困る。
すると、兄が愉快そうに笑った。
「ふふ、だそうだよ。でも私はめった斬りするつもりでいくからね。斬られないように頑張って」
「ああ。兄上こそ、油断していると痛い目に遭うぞ。俺だって、昔よりは強くなったんだ」
「じゃあ、どれくらい強くなったのかお兄ちゃんが確かめてあげるよ」
兄が太刀の鞘に手をかけ、右手で柄を軽く握った。それを見たら、少し肌がぞくっとした。決して怖いのではなく、戦う前の軽い興奮――武者震いのようなものだ。
――ああ、すごいドキドキする……!
やっと兄と戦える。あくまで訓練だが、本当に嬉しい。待ちに待った瞬間だ。
アクセルも二振りの小太刀の柄を掴んだ。自分の血がどんどん滾っていくのを感じた。
「じゃあ始めるぞー。三……二……一……ファイト!」
掛け声と共に、アクセルは抜刀した。そして真っ直ぐ兄に斬り込んでいった。
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