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第339話※
「たああぁぁっ!」
ガキン、と金属同士がぶつかり合った。穂先でわずかに火花が散った。
「うん、いいね。反応速度もとてもいい」
つばぜり合いの最中、兄が余裕めいた笑みを浮かべる。
「でも私に押し勝つにはまだまだ、かな」
「っ……」
ぐぐっ……と強引に刃を押し戻され、アクセルは舌を巻いた。優しそうな顔をしていても、兄の腕力はアクセルを遥かに上回る。単純に打ち合うだけでは勝てない。
アクセルは兄の太刀を小太刀で弾き上げ、一旦距離をとった。そして再度小太刀を構え直し、脚力を生かして一瞬で距離を詰めた。
「たあぁぁっ!」
右手の小太刀を上から振り下ろす。兄が太刀の鞘で刃を受け止めてきた。
時間差で左の小太刀も横に薙ぎ払い、腹部から胸部にかけて斬りつける。それも兄の太刀に防がれてしまった。
「まだだ!」
鞘に防がれた右の小太刀を再び振り上げ、同じところに振り下ろす。それも防がれたので一歩間合いから離れ、再び素早く間合いに踏み込んだ。
それを繰り返していたら次第に兄の動きが遅れ始め、小太刀の防御が間に合わなくなってきた。
「ハアァァッ!」
チャンスとばかりに、左の小太刀を横に振り切る。肉が斬れる手応えを感じ、兄の腹部から鮮血が飛び散った。
攻撃そのものは浅かったが、まず兄に一撃入れられたことでアクセルはより一層昂ってきた。この調子なら本当に兄に勝てるかもしれない。
後ろに跳躍して間合いから離れ、兄に向かって言った。
「どうだ、兄上。あなたの弟も、やればできるんだぞ?」
「……ふふ」
兄が口元に手を当てて笑みをこぼした。何とも幸せそうな顔をしていた。
「お前と初めて死合ったの、三ヶ月くらい前だっけ? 短い間に本当に強くなったよね」
「早くあなたに追いつきたかったからな」
「お前のその信念、見上げたものだよ。そうやって一生懸命努力するところ、大好き」
と、太刀を地面に軽く振り下ろす兄。
「じゃあ、そろそろ本番いってみようか」
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