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第341話※

 キン、と武器を跳ね上げ、距離をとって再び仕切り直す。 「いくぞ、兄上!」 「ああ、どこからでもおいで」  アクセルが一気に距離を詰める。兄も間合いに踏み込んで太刀を振り下ろしてきた。  それを左の小太刀で受け流し、軌道を逸らしながら右の小太刀を振りかぶる。 「っ……!?」  小太刀を振り下ろそうとした時、自分の脇腹から血飛沫が上がった。狂戦士モードになっているので痛みは感じなかったが、刃も当たっていないのに斬られたことに驚愕した。  驚いているところを見逃さず、兄が太刀を横に振り払ってくる。 「く……っ」  穂先が当たる前に一度距離をとる。直撃は避けたはずなのに、胸部を薄く切り裂かれて再び驚いた。 「ふふ……刀だけ防いでもだめだよ、アクセル」 「……そのようだな」  斬られていないのに何故斬られたのか。既に答えはわかっていた。  これは上位ランカーならではの芸当。武器を振るう時、空気も一緒に刃として振るっているのだ。ミューも訓練の時、空気そのものを武器に暴れまわっていた。  だから刃だけを防いでも、鋭い空気で身体を切り裂かれてしまう。  ――さすがだな、兄上……。  自分にはまだ真似できない。兄はいつでも自分の先を行っている。本当の意味で兄に追いつけるのはいつになるかわからない。  でも……それでも、兄と真正面から向き合うことができてすごく嬉しい。  アクセルは気を取り直し、二振りの小太刀を構えた。 「まだまだ」 「ふふ、いいね。その意気だよ、アクセル」  自分の脚力を生かし、間合いに踏み込んで十字に小太刀を振る。  兄はそれを華麗にいなすと、アクセルの首めがけて太刀を振り払ってきた。  ――どうせ止められないなら……!  アクセルは左腕を掲げた。攻撃を防ぐためではなかった。刃を防いだところで、空気までは防げないとわかっていたからだ。  それに、今なら腕一本落とされたところで痛みは感じない。

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