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第342話※
「っ……!」
左腕に衝撃が走り、肘から先が吹っ飛んだ。小太刀を握ったままの腕が身体から離れ、どこかへ吹き飛ばされていくのが見えた。
だがそこで動きを止めることはなかった。
アクセルはそのまま兄の懐に入ると、残った右の小太刀を正面に突き出した。太刀を振り切ったばかりの兄は、反射的に左手で胸部を庇ってきた。
「もらった!」
まず左手を貫き、次いで兄の身体を深々と貫いた。柄までみっしり食い込むくらい、確実な手応えを感じた。
「……ふふ、とてもいい」
たった今腕ごと胸部を刺された兄は、満足げに口角を上げた。
「でも脇が甘いよね」
右太ももに風が当たった。
次の瞬間、ぐらりと自分の身体が傾いた。
「っ……!?」
バランスを失って倒れそうになり、アクセルは咄嗟に小太刀を掴んだ。だが思った以上に深く突き刺さってしまい、なかなか引き抜けない。
兄が身体に小太刀を刺したまま、にこりと微笑んだ。
「斬った後は斬られると思った方がいいよ、アクセル」
「っ……うあっ!」
今まで感じていなかった痛みが一気に襲い掛かってきた。受けたダメージと驚愕に耐え切れず、狂戦士モードが解除されてしまったみたいだ。
「うう……く……」
右脚と左腕を切断された。残った小太刀も兄から引き抜けず、武器はほぼない状態である。これでは戦えない。それどころか、自力で立っているのも精一杯な状態だ。
「そこまでだな」
と、ジークが制止をかけてくる。軽く拍手をし、こちらに近寄ってきた。
「今回はフレインの勝ちだが、まあ弟くんもよく頑張ったじゃないか。普通の相手なら、胸部を貫いた時点でまず勝ちだ」
「……で、も……兄上は、全然平気そうな顔を……」
「いや、平気ってこともないよ」
今度は兄が苦笑を漏らしてくる。
「狂戦士モードでいるから痛みを感じないだけさ。でも確実にダメージは受けてるから、ちょっとでも気を抜いたら解除されそう。このまま急いで泉に行こうか」
血に汚れた武器を全部ジークに預け、兄は無傷の右腕でアクセルを肩に担ぎ上げた。
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