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第343話

「はあ……はあ……」  さすがに痛い。右脚と左腕を切断されたこと以外は脇腹を斬られたくらいだが、それでもこの激痛は耐え難かった。ショック死してもおかしくない痛みだと思う。  それなのに歯を食いしばって耐えているのは、単に兄の前で気絶したくないからだ。そんなみっともない姿は見せたくないという、ただの意地だ。  必死に戦ったものの結局勝てずに負けてしまって、その直後に気絶するなど、あまりに格好悪いと思った。 「アクセル」  もうすぐ泉だというところで、兄が話しかけてきた。 「洞窟の効果、確かにあったでしょ? 今日はちゃんとコントロールできてた」 「あ、ああ……それだけは、よかったと思う……」 「うんうん、後はある程度のダメージを受けても耐えられるようになれば完璧だね」 「それは……また、別の修行が必要だな……」 「そうでもないよ。狂戦士の最中に焦ったり動揺したりしなければ、勝手に解除されることはない。常に平常心でいればいいだけのことさ」  俺にとってはそれが難しいのだが……と思ったが、兄にとってはきっと朝飯前なのだろう。兄が動揺しているところなど、ほとんど見たことがない。これに関しては完全に生まれ持っての性格だと思う。 「でも正直、お前がここまでやれるとは思っていなかった。暴走はしないまでも、私に重傷を負わせるなんて予想外だった。最初はシンプルに首を刎ねてやろうと思ってたけど、全然できなかったもんね。だから、四肢を切断する方に切り替えたよ」 「それ、は……少しは、喜んでいい、のか……?」 「もちろん。思いっきり誇っていいよ。お前はランキング三位の戦士とやり合って、かなりいいところまでいってたんだから。狂戦士モードの練度はまだ足りないけど、それさえ上がればもっといい訓練ができた。次は是非とも公式の死合いで戦いたいものだね」 「……ああ」  そう言われて、ちょっと自信が出てきた。  考えてみれば、兄は戦士ランキング三位の強者なのだ。五〇〇〇人以上もいる戦士の中で、上位七名に入る凄腕の持ち主なのだ。  そんな戦士と正面からやり合ってこれだけの重傷を負わせたのだから、少しは喜んでいいのかもしれない。

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