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第345話

「ところで、この後の予定は何かあったっけ?」  と、兄が聞いてくる。 「そろそろ夕方だからな……。明日に備えて、買い物して帰るさ」 「食料なら、今朝ちょっと買い足しておいたけど」 「それもあるけど、武器屋に武器の修繕をお願いしないとな。公式の死合いじゃないから、こういうところが若干面倒だ」  公式の死合いの場合、破損した武器は勝手に回収され、一時間もすれば元の状態になって戻って来る。そういうところは大変便利だが、自分たちで鍛錬だの狩りだのを行って勝手に壊した場合は、自分で武器屋に武器を預けて修理を頼まなければならないのだ。  特に太刀や小太刀などの武器は丁寧に手入れしないとすぐに切れ味が悪くなってしまうので、ちょっとした刃こぼれでもすぐに武器屋に持って行かなければならない。自分の武器は気に入っているものの、そういったケアだけは手間がかかるなと思っている。  すると兄は笑いながら頭を撫でてきた。 「大切に扱えば、武器もちゃんと応えてくれる。逆に粗末に扱うと、肝心な時に役に立たなくなる。そういうところは、まるで生き物みたいだよね」 「そうかもな……。ボロボロの状態だと手に馴染まないというか……手入れしてないことを拗ねてるのかなって思うことがある。そういう意味では、人間とあまり変わらないな」 「うん、でもお前はちょっと乱暴されても感じちゃうでしょ?」 「なっ……! そ、そんなことない!」 「そうかい? その割には、縛られたりするといい声で鳴くよね」 「違う……! 兄上が変なことするからだ!」  腹立ち紛れに水をバシャっとかけてやると、兄は全く気にせず大笑いしてきた。  恥ずかしかったので兄から離れ、ぶくぶくと泉に潜っていたら、だんだん頭が冷えてきた。  ――兄上とこうして馬鹿な会話ができるのも、あと少しなんだよな……。  そう考えるとちょっと切ない。一年経てばまた会えるけど、その間は当たり前の挨拶もできなくなるわけだ。寂しくならないはずがない。

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