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第349話

 その夜。二人は当たり前のように同じベッドに入った。兄の家のベッドと違い、アクセルの家のベッドはそこまで大きくないため、大人二人が寝るとやはり狭く感じる。  兄が泊まりに来ることも多いから、人質から帰ってきたらベッドを大きく作り直そう……と密かに思った。  ――本当は一緒に暮らせるのが一番なんだけどな……。  そう言えば、何位になったら同居が許されるのだろう。調べておくのを忘れた。兄にも聞いたことがあるが、よくわかっていなさそうだったし、人質に行く前に調べておきたい。 「眠れるかい?」  唐突に、兄がそんなことを聞いてきた。 「洞窟から帰って来て結構寝てたから、まだ眠くないんじゃないかなーと思って」 「いや、寝ようと思えばいくらでも眠れるんだ。今日は訓練もしたしな」 「そっか。でも、まだ目が冴えてるみたいだからちょうどいいね」 「っ……んっ」  いきなり上から覆い被さられ、唇を塞がれてアクセルは目を丸くした。明日は死合いがあるから手は出して来ないはず……と思っていたのに、兄にとってはあまり関係ないようだ。  触れ合わせるキスだけにとどまらず、唇の隙間から舌を差し入れられ、ねっとりと口内を蹂躙された挙句、甘い唾液をたっぷり注ぎ込まれる。  一生懸命堪えようとしたのだが、兄の手練手管には到底かなわず、敏感なアクセルはあっという間に官能の火をつけられてしまった。 「あ、兄上、ちょっと……」  どうにか兄の肩を押し返し、唇を離して訴える。 「何度も言ったと思うが、俺は明日死合いなんだ……」 「そんな重要視するほどの相手じゃないでしょ。それに、腰痛になっても狂戦士になっちゃえば平気だよ」 「……狂戦士モードの使い方、いろいろ間違ってないか?」 「使えるものは有効に使った方がいいじゃない」 「そういう問題じゃ……」 「それとも何? お前はお兄ちゃんからのご褒美欲しくないの?」 「っ……!」  言われて、かあぁっと頬が熱くなる。

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