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第366話
もちろん、似ているというだけで別人なのはわかっている。
が、金色の髪といい、青い目といい、美しい容姿といい、ふんわりした雰囲気といい、思った以上に兄・フレインとの共通点が多かったのだ。
彼は胸元に軽く手を当てて、言った。
「ようこそ、アース神族の世界 へ。私はバルドル。きみが今回のお客さんかい?」
「えっ……あ……」
喋り方まで兄に似ている。なんだか気が緩んでしまいそうだ。
とはいえ、相手は神である。しかも一年間世話になる神なのだ。失礼は禁物だ。
アクセルは気を取り直して、丁寧に頭を下げた。
「アクセルと申します。ヴァルハラから参りました。一年間よろしくお願いします」
「いいよ、そんなにかしこまらないで。久しぶりの客人で私も嬉しいんだ。仲良くやろう、アクセル」
「は、はあ……」
「では早速私の屋敷に行こうか。ついておいで」
バルドルが歩き始めたので、アクセルもその後に続いた。
――それにしても、調子狂うな……。
いきなりいじめられるとは思っていなかったが、ここまで好意的な反応を示されるとも思わなかった。
しかも、バルドル自ら迎えにきてくれるのも驚きだった(バルドルに仕えている下部か何かが迎えにくると思っていた)。
何より、バルドルの容姿が気になって仕方がない。
ブロンドの金髪に、陶器のような肌。穏やかそうな青い瞳と、おっとりした喋り方。何故こんなに兄に似ているのかというくらい、よく似ていた。
いや、もちろん兄の方が数倍美人だと思うが、ここまで兄に似ていると余計に調子が狂ってしまう。
もっと緊張感を持たないといけないのに……と思っていたら、バルドルが優しく話しかけてきた。
「ヴァルハラでの生活はどう? 毎日戦いと宴が繰り返されているんだろう?」
「え、ええ……。それがオーディン様の眷属 の役目ですので」
「そうだね。父上は強い戦士に目がない。きみもきっと強いんだろうな」
「いえ……俺はまだまだです。早く兄に追いつきたいと思っているんですが、なかなか……」
「へえ? きみにもお兄さんがいるの?」
「あ、はい……。とても綺麗で強い、自慢の兄なんです」
ちょっとあなたに似てるんですけどね、と心の中で呟く。
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