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第368話

 するとバルドルは、軽やかに笑い出した。 「そんなこと気にしてたの? きみは真面目だね」 「いえ、でも……」 「さっきも言わなかったかな? 形式的には『人質』かもしれないけど、私はきみのこと『お客さん』だと思ってるんだ。部屋はいっぱい余ってるし、使ってない家具もたくさんある。きみが有効に使ってくれるなら、その方が嬉しいよ」 「は、はあ……」 「それに、私は普段この屋敷に一人暮らしでね。お客さんも滅多に尋ねて来てくれないからちょっと寂しいんだ。だから一年間とはいえ、きみが来てくれてよかったと思ってる」 「バルドル様……」 「それにほら、きみはあくまで父上の戦士だからさ。父上の持ち物を雑に扱うわけにいかないじゃない。私が怒られちゃうよ」  と、冗談めかして言った後、真顔でこう告げてきた。 「だから、ここでは遠慮しないで。あれが欲しいとか、これをやりたいとか、何でも言ってくれてかまわないからね。私もいろいろお願いすることがあるかもしれないけど、お互い楽しく暮らしていこう」 「…………」 「お返事は?」 「は……はい、あ……バルドル様」  反射的に「兄上」と言いそうになって、慌てて「バルドル様」と言い直す。  ――「お返事は?」なんて、ますます兄上みたいだ……。  間違って呼んでしまわないように気を付けなければ。どんなに似ていても、バルドルはあくまでバルドル。兄・フレインではない。  しかし、不自由ない暮らしができそうで安心した。アクセルは彼の顔色を窺いながら、なるべく丁寧にお願いした。 「あの、バルドル様……ひとつお聞きしたいんですが……」 「うん、何だい? 何でも言って」 「ヴァルハラにいる兄に手紙を書きたいのですが、そういうことは可能でしょうか? もし可能であれば、やり方を教えていただけると助かるのですが……」

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