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第378話
「ちょっと前までは、下位ランカーがひとつの家にまとまって生活することもあったじゃない? シェアハウスみたいな感じで。それを考えると、同居にランクなんて関係ない気がするんだよね」
「えええ!? そうなんですか!?」
「うん、多分……。うちにもヴァルハラのルールブックあるけど、『○位以上で同居可能』みたいなことは書いてなかったような……」
私の記憶違いだったらごめんね、と笑うバルドル。
――嘘だろ……?
上位ランカーと同居するには、自分もそれなりにランクを上げないといけないのだと思い込んでいた。狩りやお泊りにもそれなりのランクが必要だから、当然同居にも一定のランクが必要だろうと。
しかし、よくよく考えてみればランクの低い新人戦士は、専用の寮で共同生活を送っているし、貴族出身のユーベルは身の回りの世話をさせる下位ランカーを何人か屋敷に住まわせている。
もっとも、それは「同居」ではなく、一種の特別措置だと認識していたのだが……。
――それじゃあ、手続きさえしてしまえば兄上と同居できたってことか?
自分の浅はかさに脱力してしまう。
こんなことなら、もっとよく「ヴァルハラのルールブック」とやらを読んでおくんだった。というか、ルールブックがあること自体知らなかった。何でそんな大事なものが存在していることが周知されていないんだ。誰か教えてくれればよかったのに。
「あああ、もう!」
腹立ち紛れにゴン、とテーブルに頭をぶつけたら、思った以上に強く打ってしまって額にたんこぶができた。ちょっと痛かった。
「え、大丈夫?」
「……すみません、ちょっと荒ぶりました。こっちの問題なので、お気になさらず」
笑ってごまかしたが、内心悔しくてしょうがなかった。ランクに関係ないことを知っていれば、もっと早く兄とひとつ屋根の下で暮らせたのに!
――ヴァルハラに帰ったら、いの一番に手続きしてやる!
念のために、後でバルドルから「ヴァルハラのルールブック」とやらを貸してもらおう……と思いつつ、アクセルはシチューをかき込んだ。
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