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第380話
「そうなのか。じゃあ好きにするといいよ。屋敷の周りを走るなり、ポストまで行って帰って来るなり、好きなコースをランニングして来て。ちなみに、私は七時くらいには起きて朝食の準備を始めるから、よろしく」
「七時ですか……わかりました」
じゃあ、六時前には起きて軽くランニングして、帰って来て汗を流して、一緒に朝食の支度をすればいいということか。
――ポストまでランニングするついでに、兄上にまた手紙を出しに行くかな。
それで、朝食の後はバルドルに言われた仕事をして、可能ならばポストを作り直し、暇になったらルールブックを読んだりすればいい。他のことはこれから考えよう。
夕食を平らげ、食器等を片付けて、アクセルは自室に戻った。そこで寝間着に着替え、ルールブックの続きを読んでいたら、不意に部屋をノックされた。
ドアを開けたら、ラフな格好をしたバルドルが立っていた。彼の隣には小さなワゴンがあり、酒とグラス、簡単なつまみが用意されている。
「きみはお酒飲める? よかったら少しどう?」
よかったら……も何も、最初から飲む気満々で用意してるじゃないか、とこっそり笑ってしまった。
「ええ、もちろんかまいませんよ」
「じゃあ入ってもいい?」
「どうぞ」
彼を部屋に招き入れ、一緒にソファーに座る。テーブルにグラスを置き、バルドルが用意してくれた酒を注いだ。
「ヴァルハラにも、名物のお酒があったよね? 私は飲んだことがないけど」
「ヤギの蜜酒ですね。イノシシのシチューと並ぶ名物です」
「ああ、それそれ。味はどんな感じなの?」
「美味しいですよ。癖がなくマイルドな味わいで、どんな食事にもよく合います」
「そうなんだ? 私も一度飲んでみたいなぁ」
「ヴァルハラと荷物のやり取りができればいいんですけどね……。そしたら兄に手紙を書いて送ってもらうんですけど」
「うーん……どうだろう。手紙以外のやり取りはしたことがないなぁ。でも、手紙がOKなら荷物もOKなのでは? ……と思うんだよね」
そんなことを言いつつ、バルドルは酒の注がれたグラスを持ち上げた。アクセルも一緒にグラスを持ち上げ、縁同士を軽くぶつけ合って乾杯した。
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