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第381話

「ああ、こうやって誰かと酒を酌み交わすのって本当に久しぶりだなぁ」  バルドルが感慨深そうに言う。  見るからに嬉しそうだったので、アクセルは軽い気持ちで聞いた。 「普段は、お酒は飲まれないんですか?」 「そうだね……。飲むこともあるけど、一人だと滅多に飲まない。話し相手がいないとつまらないし」 「なるほど……。確かに俺も、一人だと何もしないで寝てしまうことが多いです」 「わかるわかる。一人でもできるような趣味を持っていない限り、夕食が終わると寝るしかなくなるもんね」 「ちなみに、趣味は何か……?」 「それが何も。料理はさすがにやるけど、如何せん不器用でね……。創作系はまるでダメなんだ」 「そうなんですか? そんな風には見えませんが……」 「そうなんだよ。だからあのポストもずっと作り直せないままなの」  自虐的に笑うので、自然とこう言っていた。 「じゃあ、今度一緒にポストでも作ります?」 「え、いいの?」 「ええ。今後たくさん手紙を出すことになると思うんで、ポストがあのままじゃ不便でしょう。なるべく早く、もっと入れやすい場所に作り直してやろうと思っていたんです。……あ、もちろんバルドル様にも予定があるでしょうから、すぐにとは……」 「ううん、大丈夫。毎日定期的な仕事を終わらせてしまうと、やることなくて暇なんだ。そういう風に時間を使えるなら、生産的でありがたい。明日にでも、いい材料を見繕いに行こうか」  さも嬉しそうに笑うバルドル。  一緒に料理をしたり、一緒に散歩したり、一緒にDIYをしたり……。  ――バルドル様、余程寂しかったんだな……。  一年限定とはいえ、自分が側にいることで彼の寂しさを紛らわせることができるなら、それはそれで嬉しい。  けれど、同時にふと思ったのだ。兄もかつてはこんな気持ちだったのかもしれない、と……。

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