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第383話
「私も弟を持つ身だから、お兄さんの気持ちがちょっとだけわかるかもしれないなぁ……」
「えっ……?」
「お兄さんって、弟の前ではあくまで『強いお兄さん』でいたいんだよね。決してふんぞり返りたいわけじゃなくてさ。細かいことはどうでもいいけど、肝心なところではしっかりしなくちゃ……と思いがちなの。少なくとも、私はそう」
「…………」
「きみのお兄さんも、そういうところがあるんじゃないかな。もちろんきみ自身は一生懸命頑張ってるんだろうけど、お兄さんにとっては弟であることは変わりないわけでしょう? 頼りになるとかならないとか、それ以前の問題なんだよ。いくらたくましく成長しても、弟は弟なんだ」
「……!」
「ましてやきみとは年齢差が十一歳もあるっていうじゃない? だから余計に『お兄さん意識』が強くなっちゃうのかもなぁ。これはもう本能みたいなもので、性格に関係なくそうなっちゃうの」
「…………」
そう言えばそうだった……と、妙に納得してしまった。いくら兄に「頼りにしてるよ」と言われてもあまり信じられなかったものが、バルドルに言われた途端、ストンと心に落ちたのだ。
――「兄」の本能……か。
これまでも何度か「兄上が全然俺を頼ってくれない」と悩んだことがある。
それは自分がまだ兄に追いついておらず未熟だからだ……と考えていたが、そういうことに関わらず「兄は弟に頼れない」のだ。細かいことなら――それこそ家事を丸投げするとか、雑用を振ってくるとか、そういうことはしてくる。
だけど、例え死にそうなピンチに陥ったとしても、それで「アクセル助けて」とはならない。むしろ「大事な弟を巻き込んじゃいけない」という心理が働いて、全部一人で抱え込んでしまうのだ。
危なくなると「兄上助けて」となるアクセルとは正反対である。
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