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第384話
「……そうかもしれませんね」
と、小さく微笑む。
肝心な時に頼ってもらえないのは寂しい。寂しいが、それが兄の本能だというなら仕方がない。
その分、普段の生活で十分に支えてあげればいいのだ。兄の代わりに料理・洗濯・掃除、その他の雑用をこなしてあげればいいのだ。
「ところで、このお酒どう? 私のお気に入りなんだけど、きみの口には合ってる?」
そう言いつつ、バルドルは自分で二杯目、三杯目の酒を注いでいる。
――ちょっとペース早くないか?
大丈夫かな……バルドル様、お酒強いのかな……と様子を窺いつつ、アクセルもちびちびと酒を味わう。ヤギの蜜酒ほどガバガバ飲めるわけではないが、これも口当たりが爽やかで飲みやすかった。
「このつまみもね、私のお気に入りなんだ。アースガルズでよく食べられてるクラッカーなんだけどね、そこにペーストしたチーズを乗せたり、塩漬けした卵と一緒に味わうとすごく美味しいんだ。お酒のつまみにぴったりだろう?」
「え、ええ……確かに美味しいですが……」
「ほら、アクセルもどんどん食べて。お酒もたくさんあるし」
「は、はあ……」
バルドル様、明らかに酔っ払っている気がするのだが……。
「あの、そろそろお休みになった方が……。結構回っているようですし……」
「ええ~……? 大丈夫だよ~……私はまだ平気……」
そう言いつつも、バルドルの呂律はだんだん怪しくなってきていた。白い頬は色っぽく紅潮し、瞳は濡れてぼんやりしている。
アクセルはテーブルに飲みかけグラスを置き、ソファーから立ち上がった。
「バルドル様、もう休みましょう。歩けますか?」
「ええ~……? まだ飲み足りないのにー……」
「一日でこんなにたくさん飲まなくても、明日もありますから。今夜はこれくらいにしておきましょう、ね?」
「大丈夫なのにぃ~……」
そう言って、バルドルはゆっくりとソファーから立ち上がった。が、酔っ払って足元がもつれ、ふらりと転倒しそうになる。
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