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第385話

「バルドル様、しっかり……。本当に大丈夫ですか?」 「あー……大丈夫じゃないかもー……。今日はここで寝るよー」 「……え? ここでですか?」 「だってー、部屋まで行ける気がしないもんー……。アクセル、一緒に寝よう~……」 「え……それは……」  ……初日からいきなり一緒のベッドで寝るとか、そんなことしていいんだろうか。  ――とりあえず、あそこのベッドに……。  アクセルはバルドルに肩を貸しながら、部屋にあったベッドまで歩いた。  その距離わずか数メートルだったが、バルドルがふらふらの千鳥足状態だったため、ベッドまで辿り着くのに数分かかってしまった。 「今日はここでお休みください。俺はあっちのソファーで寝ますので」 「え~……? きみも一緒に寝ようよ~……」 「わかりました。とりあえずバルドル様は先にお休みください。俺は片付けをしてから寝ます」 「うーん……そうかい……? 片付けなんて後でもいいんだけどなぁ……」  彼の口調は、完全に眠気を帯びていた。  どうにかこうにかバルドルをベッドに寝かせ、おとなしくなったところでアクセルはテーブルに戻った。散らかったままのグラスを片付け、酒瓶やつまみもワゴンに戻し、テーブルの上を綺麗に拭く。  ワゴンを厨房まで戻しに行って、グラスや皿を綺麗に洗い、それから自分の部屋に戻った。  ――バルドル様、もう寝ただろうか……。  寝ていなかったら困る……と思い、恐る恐るベッドを覗き込んだら、規則正しい寝息をしていたのでちょっとホッとした。まだ酔っ払ったままで「一緒に寝よう」などとゴネられたら大変だ。  小さく苦笑し、アクセルは自分の掛け布団を持ってロングソファーに横になった。 「……ホズ……」 「えっ……?」  バルドルの声が聞こえたので、バッと起き上がって様子を窺った。起きたのかなと思ったが、目を覚ましたわけではないようだ。どうやら寝言だったらしい。

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