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第386話

 ――寝言で名前を呼んでしまうほど、相手を求めてるってことかな……。  ホズとはバルドルの弟である。話を聞いた様子だと、バルドルは相当ホズの事を可愛がっているみたいだった。もしかしたら、自分と兄・フレインみたいに相思相愛の関係なのかもしれない。  だとするならば、滅多に会えないのは確かに寂しい。自分で例えるなら、無期限の人質に出されていつ兄に会えるかわからないような状態だろう。そんなことになったら、発狂してしまいそうだ。  ――なんで自由に会えないんだろう……。  神には神の事情があるんだろうか。アクセルにはよくわからないが、ヴァルハラよりも決まりが多くて生きづらそうだ。  神も神で楽じゃない……。  ――ならばせめて、ここにいる間はなるべく一緒の時間を過ごしてあげよう……。  そう心に決め、アクセルはロングソファーに戻って横になった。掛け布団をかけてじっと目を閉じていたら、いつの間にか眠っていた。 ***  翌朝、アクセルは自然と目を覚ました。ゆっくり寝てていいと言われたのに、いつもの習慣が抜けなくて結局六時くらいに起きてしまった。  ――バルドル様は……?  ベッドを見たら、まだ彼はすやすや寝息を立てている。酒が残っているのか、起きる気配はなかった。  アクセルはなるべく音を立てないよう、静かに着替えて日課のランニングをしに行った。  屋敷を出て例のポストまで走っていき、世界樹・ユグドラシルを見上げる。  ――俺、昨日はここから出てきたはずなのに、ゲートがないんだよな……。  ユグドラシルは、全ての世界を繋いでいる大樹である。アースガルズとヴァルハラを繋ぐゲートもユグドラシルにあり、事実アクセルは、ここに来る際、ヴァルハラにあったゲートを通ったのだ。  それならゲートの痕跡があってもおかしくないのに、扉も何も存在しない。  確かにこれでは、どのタイミングで世界を渡れるのかわからないし、自由に行き来することもできなさそうだ。不便なものである。 「…………」  小さく息を吐き、アクセルは元来た道を走って戻った。

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