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第387話

 屋敷に帰って軽く汗を流そうと思ったら、バルドルが迎え出てくれた。 「おはよう、アクセル。朝からランニングかい?」 「おはようございます、バルドル様。今朝はもう大丈夫ですか?」 「大丈夫って? 何のこと?」 「いえ、昨夜だいぶ酔っていらしたので……」 「えっ、そんなに酔ってた!?」 「ええ、まあ……」  言葉を濁して伝えたら、バルドルは顔を赤くして頬を押さえた。 「あああ、ごめんね! 何できみのベッドで寝てたのか不思議だったんだよ。私、酔っ払ってきみと一緒に寝ちゃったの!?」 「ああ、いえ……。俺はソファーで寝たので一緒ではないですよ」 「本当に? 何かこう、きみをホズと間違えて変なことしちゃったりは……?」 「ないですよ。ちょっと寝言言ってましたけど、それだけです」 「ね、寝言? それって……」 「ただ一言、ホズ様の名前を……それだけです。他には何も言ってませんよ」 「ほんとに? ほんとに何もなかった?」 「ありません」  きっぱりそう言ってやったら、バルドルはようやくホッとした顔になった。 「ああ……よかった。もしとんでもないことしてたら、あまりに申し訳なくて……」 「いえ、そんな……」 「本当にごめんね……。初日から酔っ払って迷惑をかけて」 「大丈夫ですよ。気にしないでください。誰にだって酔いたくなる時はありますし」 「いや、その……酔おうと思って飲んだわけじゃないんだ……。久しぶりに誰かと飲めると思ったら嬉しくて、つい……」  恥ずかしそうに言い訳してくるバルドル。  その様子がちょっと可愛くて、アクセルはにこりと微笑んだ。 「えっと、そうだ。そろそろ朝ご飯にしようと思ってたんだ。今から作るけど、何でもいい?」 「ええ、もちろん」 「よかった。じゃあ汗を流して着替えておいで。急がなくていいからね」  そう言って、バルドルはパタパタと厨房に向かっていった。  アクセルも、自室に戻って身支度を……と思っていたら、バルドルがくるりと引き返してきた。

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