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第392話

 そりゃあ、ある程度は武器も扱えるかもしれないが、ヴァルハラにいるような粒揃いの強者とは違うと思うのだが……。 「ええと……いいんですか? 本当に?」  様子を窺うように聞き返したら、バルドルは微笑みながらこう言った。 「うん、もちろん。ヴァルハラの戦士がどれだけ強いのか、私に見せて欲しいな」 「は、はあ……しかし、万が一バルドル様がお怪我でもしたら……」 「大丈夫だよ。私はどんな武器で斬りつけられても死なないんだ」 「……え?」  意味がわからず、またもや怪訝な顔になってしまう。  ――どんな武器で斬りつけられても死なない……って、どういうことだ?  例え神であっても、致命傷を負ったら「死者の国(ヘル)」に送られるはずなのだが……。 「……これはちょっと話すと長くなるから、おいおい教えてあげるよ。とにかく私は、どんな武器でも死なないから、安心して」 「はあ。そこまで仰るなら……」  かなり気になったが、複雑な話みたいだったので、今はそれ以上聞かないことにした。アクセルは黙ってフォークに刺さったベーコンを口に運んだ。  朝食を綺麗に平らげ、バルドルと一緒に食器や調理器具を洗った。二人で同じ作業をするのが余程楽しいのか、バルドルは時折上機嫌に鼻歌を歌っていた。 「ごめんね。私にも日課というか、簡単な仕事があって。お昼には終わると思うから、それから一緒に鍛錬するかい?」 「ああ、いえ……鍛錬はいつでもかまいませんよ。急かしても申し訳ないので、俺はルールブックでも読んでます」 「……そう? じゃあ仕事終わるまで待ってて。なるべく早く終わらせてくるから」 「はい。でも無理はなさらないでくださいね」  そんなわけで、お昼までそれぞれの部屋で過ごすことになった。  ――どうするかな……。  ルールブックはまだ読破していないが、何となく読む気にならない。兄に手紙は書いてしまったし、一人であのポストに出しに行くのは危ないし……。

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