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第393話

「……あ、そうだ」  あることを思いつき、アクセルは机に座った。便箋とは違う白紙の紙を取り出し、ペンをとってポストのデザインを描いて行く。  手紙を回収して届けてくれるのは「ふくろう」たちだと聞いた。それなら彼らが仕事しやすいよう、巣箱っぽいデザインになっているのが望ましい。  直方体の上下に大きめの穴を開けて、地面に設置すれば投函もしやすくなるはず……うんぬんかんぬん。  そんな調子で、縦横の寸法も細かく書いていき、ついでに必要な材料も書き記した。外にあるものなので雨風に強い木材がいいが、ある程度加工しやすい柔らかさも欲しいところだ。  ――あとはペンキと刷毛と……もちろん、ノコギリもいるよな……。  頭の中でシミュレーションしながら書いていったら、結構な量になってしまった。ポスト作りにはまず、必要な道具・材料から揃えるところから始めなくては。 「…………」  こんなものか……と一度ペンを止めたところで、アクセルは時間を確認した。まだ十時にもなっていなかった。バルドルもさすがに仕事が終わっていないだろう。  仕方がないので部屋の床に座り、腹筋や腕立て伏せをして過ごすことにした。  ――兄上と話したいなぁ……。  今朝手紙をもらったばかりなのに、自分も随分な甘えん坊だ。今まで――死別していた期間を除けば――兄が側にいることが当たり前だったので、それが急になくなると途端に寂しくなってしまう。  一年間は会えない決まりだが、年末年始の里帰りくらいは許してもらえないかなぁ……と淡い期待を抱く。バルドルなら話もわかるし、少しは融通してくれるかもしれない。  いつかそれとなく窺ってみよう……と思いつつ、アクセルは動きを止めた。そしてぼんやり天井を眺めた。  頭の中で兄との楽しい妄想を繰り広げていたら、 「……アクセル、大丈夫かい?」 「ハッ……!?」  不意にバルドルに呼びかけられ、我に返った。  アクセルはガバッと床から起き上がった。何故か十二時を過ぎていた。

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