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第399話
「まさかぁ。私にはそこまで細かいルールを定めることはできないよ」
「そ、そうですか……。ルールブックをお持ちだから、てっきり」
「ルールブックはその気になれば誰でも手に入れられるよ。だけど、その中身を記すのはとても難しい。何もルールがないところから、全部構築しないといけないからね」
「確かに……。では、ヴァルハラのルールはやっぱりオーディン様が作ったんですか?」
そう聞いたら、驚きの答えが返ってきた。
「いや、ランキング制にしたのは父上だけど、そのランクによって『どういう権利が~』とかをきちんと決めたのは別の人だよ。あと、治安を整備したのも父上とは全然関係ない」
「……え? そうなんですか?」
「うん。私が聞いた話では、無法地帯だったヴァルハラの改革を進めた戦士がいて、その人を中心としていろいろルールができたって」
「ええええ!? そんなの聞いたことないんですけど!」
「あれ、じゃあ違うのかな……。でも、父上はヴァルハラのことを『自分の戦士を囲っておく箱庭』程度にしか考えてないから、自分から率先して細かいルールを決めるなんてことはないと思うんだ。無法地帯っぷりに困り果てた戦士が、中であれこれ改革したとしても全然おかしくない」
「ええー……?」
あまりに驚きすぎて、フォークを握る手も止まってしまった。
――そんな話、一度も聞いたことがないんだが……。
バルドルと話していると、次から次へと驚きの事実が飛び出してくる。今までヴァルハラで生活してきたのに、自分はヴァルハラのことを何も知らなかったようだ。
――そう言えば兄上、「昔は治安がよくなかった」って言ってたような……?
ということは、兄はヴァルハラが徐々に改革されていくのを、目の当たりにしている可能性がある。兄自身はそういった昔話をほとんどしてくれなかったが、この際だからじっくり聞いてみるのも悪くない。
……いや、今は直接話す手段がないのだけれど。
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