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第400話
――また手紙を書いてみるか……。
今日の分はもう書いてしまったから、明日の分に回してみよう。
というか、こういうことは手紙でちまちまやり取りするのではなく、直接話して詳しく聞きたいところだ。
「そう言えば、きみのお兄さんは今ヴァルハラにいるんだよね?」
と、バルドルが聞いてくる。
「戦士になって何年くらい経ってるの?」
「ええと、少なくとも十年以上は経っていますが」
「そっか。十年だと戦士としてはまだ新人の方なのかな? あそこには一〇〇年超えのベテラン戦士もたくさんいるもんね」
「……そうなんですか? 俺は誰がどのくらいの年季が入ってるか、あまり聞いたことがないので……」
「おや、きみはそういうことに興味がないの?」
「いえ、その……今までは兄に追いつくことで必死だったので……」
言外に「他のことに興味を持つ余裕がありませんでした」と言ったら、バルドルに軽く笑われた。
彼は頬杖をついて、言った。
「きみを見ていると、つくづくホズに似ているなぁと思うよ。真面目で一途で一生懸命なところなんて、本当にそっくり」
「そ、そうですか……?」
「ホズもね、『早く兄上の支えになりたい』とか言って毎日鍛錬に勤しんでいるんだ。目が悪いのに、まるで見ているみたいに強くてね。今じゃ、私より強くなっちゃったんじゃないかな」
「へえ……」
「もしホズがこっちに遊びに来たら、手合わせしてもらうといいよ。きっといい経験になる」
「はい、それは是非……」
とは言ったものの、アクセルにはイマイチ想像できなかった。
――目が悪いのに、普通の人以上に戦えるものなんだろうか……。
常人で例えるなら、目隠しされた状態で戦うようなものである。そんなこと、自分には到底できそうにない。兄にもできるか微妙だ。
――ホズ様……バルドル様の弟か……。どんな方なんだろう……。
ちょっと興味が湧いて来た。アクセルは止まっていた手を動かし、残りの昼食を平らげた。
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