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第401話(フレイン視点)
――暇だなぁ……。
自宅のソファーに寝転びながら、フレインは弟からの手紙を眺めた。かっちりした綺麗な字がビシッと整列しており、真面目な弟の性格がよく表れている。内容もごく普通の世間話で、面白エピソード等は書かれていなかった。
まあ、初日からいきなり面白エピソードを期待するのもおかしいかもしれないが。
次の手紙は明日かなぁ……と思いつつ、フレインは手紙を四つ折りにして綺麗な空き箱にしまった。弟からの手紙は、全部ここにしまって保管しておくつもりだ。変なところに入れておくと、なくしてしまいそうだから。
「はあ……」
再びごろりとソファーに横になる。
本当につまらない。鍛錬をする気にもならないし、狩りに行く気も起きない。最低限、決められた死合いにだけは出るけど、どいつもこいつも張り合いがなさすぎて退屈極まりなかった。
積極的に「暇だー!」と叫べばユーベル辺りがお茶に誘ってくれるかもしれないが、今はそれすらも参加する気にならない。
――アクセルがいないと、本当に退屈……。
深い溜息をつき、力なくまぶたを閉じる。
弟が生まれて十六年後、自分は死んでヴァルハラに招かれた。それから弟がこちらに来るまでの十一年間、ずっと離ればなれで過ごしてきた。
けれどあの時はいろいろやるべきことがあったし、弟のために何とかしなきゃと思っていたので、さほど退屈は感じなかった。むしろ今より忙しいくらいだった。
そのおかげで治安はだいぶよくなったが、その分仕事が減って暇になってしまった。一緒に遊んでくれる相手がいないと、どこまでも無気力になってしまう。
アクセルとお喋りしたい。一緒に食事して、一緒に買い物に行って、死合いさながらの訓練をして、一緒に泉に入って、家に帰ったら汗を流して、一緒のベッドで眠りたい。
弟の鳴く声を聞くのもいいし、自分が組み敷かれてもいい。弟とまぐわっていると、本気で死合うのと同じ快感が得られる。二人だけの至福の一時だ。
――だけど、そういうのも一年間はお預けだしなぁ……。
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